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紫陽花  ≪3≫

手術前夜、手帳に祈りを、恐れを夜明けまで書き続けていました。手術の後も体調や感謝や不安を書きとめていました。
退院してからは治療と生活することに精一杯で・・・いえ本当は5年間が恐くて時間を止めたかったのかもしれません(5年生存率)。不安から逃れたくて時間を早く進めたかったのかも知れません(寛解まで10年間)。

混乱した私は、時間そのものを忘れたかったのでしょう。手帳には、日付のない生活の様子や気持ちなどが、ごく短い文章や言葉でたくさん書かれていました。
そんな手帳を広げたある時、誰もいない一人の部屋で、笑っている自分に気づきました。

その部分を白い紙に、丁寧に書き写しました。

声に出して読んでみました。笑っている自分の声に気づきました。

笑っていると、体中の力が抜けていきました。やがて、涙が溢れました。
泣いているのか笑っているのか分からなくなって・・・どちらでも良くなりました。
どんなことがおきようと、どんな風に見えようと、私はわたしらしくここにいる。
あの時の紫陽花のように。

何度も読み返しながら・・・時間に捕らわれ混乱していた自分に気づきました。それから、今ある幸せにこころから感謝をしました。

『病の気から元の気へ』わたしは私らしさを思い出しました。そして捉えどころのない漠然とした不安から解放されたのです。

そういえば紫陽花って小さな花びらの集まりですが、何となく大きなかたまりのようなイメージでしょ。
小さな花びらは、それぞれ色、形、大きさが微妙に違います。それなのに集って一つの大きな花になるのですね。
それぞれの個性が自己主張しながらも一つにまとまって、一輪の花。

 

私たちのこころの中には、いろいろな想いがたくさんあります。

嫌なところも、好きなところも、もちろんありますが、それぞれが集って、「私」という花になるのだと思いました。

大切なことは、じぶんらしく在ること。

ただ自分であり続けること。

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